超画期的なGLP1治療、、始まりは、ここからでした。

欧州糖尿病学会に参加して、目をみはったのが、セマグルタイドの毎日、注射でした。
セマグルタイドは、商品名、オゼンピックで、日本でも、2018年には、処方できるはずの薬でしたが、残念ながら、日本での発売は延期になりました。

 

ただ、この発表を聞いて、即、GLP1受容体作動薬は、糖尿病の血糖コントロールだけでなく、抗肥満薬にも応用できると考えて、GLP1ダイエットの臨床(ダイエットプラクティス)を初めてみようと考えたわけで、その意味では、私にとっては記念すべき論文です。

 

A 26-weeek randomized controlled trial of Semaglutide once dayily versus Liraglutide and placebo in patients with type 2 diabetes suboptimally controlled on diet and exercise with or without metformin.
Diabetes Care July 18, 2018

 

本来なら、1週間に1回の注射であるセマグルタイドを、毎日、注射したら、どうなるか、という研究です。
2型糖尿病の患者を対象にして、HbA1cが7から10%の間にある人を対象にして、多施設、二重盲検試験が組まれました。

 

2:2:1群にわけられ、セマグルタイド群、リラグリチド群、プラセボ群に振り分けられました。さらに、セマグルタイド群は、0.05mg, 0.1mg, 0.2mg, 0.3mgの4つのsubgroup群にわけられ、リラグリチド群も、0.3mg, 0.6mg, 1.2mg, 1.8mgの4つのsubgroup群にわけられ、各群間での比較が行われました。

 

その結果、組み入れに成功した人は705名。

 

26週目の段階で、HbA1cの変化は、セマグルタイド0.05mgで、−1.1%。セマグルタイド0.3mgで、−1.9%でした。これに対して、リラグリチド0.3mgでは、−0.5%、リラグリチドの1.8mgでも、−1.3%でしたから、明らかに、セマグルタイド群のほうが、有意に勝った治療法であることがわかります。

 

ただし、消化器症状については、セマグルタイド群が、32.8~54%だったのに対して、リラグリチド群は、21.9~41.5%でしたから、リラグリチドのほうが、少しだけ消化器症状が少ないこともわかりました。

 

この結果から、同じ毎日、注射するのであれば、リラグリチドより、セマグルタイドのほうが、より強力な治療であり、最小容量の0.05mgであっても、HbA1cを−1.1%低下させることがわかったわけです。

 

ただし、セマグルタイドの最大投与量では、HbA1cは、6.0%前後まで低下していましたから、その意味では、単剤で、このレベルまで低下させれる薬剤は、これまでなかったわけで、ものすごく、有効な治療法がでてきた、と、私たち糖尿病専門医は、驚いたわけです。欧州糖尿病学会で、このグラフをみた時には、おもわず、ポスターの前で、立ち止まり、目を疑い、そして、フリーズしてしまいました。

 

また、それに伴う体重減少も顕著で、平均体重 94.5kgだった体重が、26週間後には、85.5kgくらいまで、ざっくりとですが、セマグルタイドの最大投与量では、約9kg、減量に成功していたわけです。抗肥満薬としては、5%以上の体重減少があれば、十分、使えます。腹囲も7cmは短くなってました。

 

一般に、糖尿病があると、血糖コントロールをすると、体重が増えることがあります。ですから、糖尿病がない人と比べて、GLP1は、体重減少効果が少ないはずなのですが、それでも、これだけの幅で、体重を落とせたということになると、もし、この治療を、糖尿病がない肥満だけの人に投与したら、さらなる体重減少効果が期待できる、という理論は、説明するまでもありません。

 

糖尿病がある場合でも、体重が5%以上低下した確率は72%。体重が10%以上低下した確率は19%です。もし、糖尿病がない人に、この治療を行った場合、理論的には、成功する確率は、さらに高まるはずです。糖尿病があっても、体重減少の平均減少量は、−6.4kg、でした。糖尿病がなければ、もっともっと減量が期待できるはずです。

 

このポスターを、ずっと眺めていたら、隣に、素敵な日本人女性がたって、私と同じく、考え深く見ていました。ドクターか、と思って訪ねたら、アストラゼネカ社の学術の方だったらしいです。ビデュリオンから、セマグルタイドに切り替えるつもりでいた私にとっては、「まことに申し訳ないが、日本でセマグルタイドが発売されたら、全員、切り替えるつもり、」、であることを話しましたら、かるく頷いてくれました。しかたがない、という感じでしたが、やはり世界の学会という舞台で、こういう会話が日本人同士でできるというのは、うれしい瞬間でした。

 

この瞬間から、日本に帰ったら、即、GLP1ダイエットを臨床で、実行しなくては、その準備をしようと考えて帰国したわけです。糖尿病治療だけでなく、ダイエットの臨床ですから、ダイエットプラクティスが良い名称だろうと、今でも、そう思います。

 

日本でも感度のいい糖尿病専門医は、このための準備にはいったと思います。でも、2019年の1月の段階では、まだ、同じような志をもつ医師は、少ないようです。そして、残念ながら、あまりにも、セマグルタイドの効果がすごいためか、2018年11月、厚労省は日本での発売に、より厳しい規制をかけることになったわけです。発売は2年後だろうとされました。

 

抗肥満薬、いわゆる、「痩せ薬」の認可においては、厚労省は、極めて慎重になったのだろうと思います。この論文が発表されたのは、2018年のJulyですから、そこから約4ヶ月、かなり、慎重に、製薬メーカーと厚労省との間で、検討されたことでしょう。

 

残念ながら、日本での発売が見送られたのは、こうした薬剤が、糖尿病の治療をしらないが、美容目的だけに処方する、美容外科医たちや、一般のGP(general physicians) の手に届くことも、阻止しようと考えたのかもしれません。

 

ある治験をした医師は、セマグルタイドの効果について論じていましたが、その医師は、ビデュリオンを、あまり処方していないようです。もし、ビデュリオンの針が細くて、しこりもできなければ、同じ効能が期待できたはずで、、その意味では、ビデュリオンの処方経験が多い医師が、最も、このGLP1の特徴を、心得ていると考えるべきです。

 

なので、そうなると、日本で、ほぼトップの処方をしている自分がまず率先して、やらなくっちゃ、という使命感も感じました。これが、GLP1ダイエット外来をやろう、と考えた、本当に最初のいきさつでした。