GLP1タキフィラキシーについて、その3

 

GLP1タキフィラキシーについて、特に、糖尿病治療薬として、考えた場合、この「悪心、嘔吐」が減弱するということは、かえって、空腹感を増すことに繋がるということの意義を、世界に論文として、残すのは、価値があるのではないか、と考えて、英語の論文を作り、医学雑誌にも投稿し、論文になっています。

 

Basal-Supported Oral Therapy with Sitagliptin Counteracts Rebound Hyperglycemia Caused by GLP-1 Tachyphylaxis. Meguro S, Kawai T, Matsuhashi T, Sano M, Fukuda K, Itoh H, Suzuki Y  Int J Endocrinol. 2014;2014:927317. doi: 10.1155/2014/927317. Epub 2014 Mar 11. (私がLast authorです。)

 

この論文中に、しっかりと、GLP1タキフィラキシーが起こることは、必ずしも、GLP1治療において、望ましいことばかりではない、かえって、DPP4阻害剤のほうが、優秀なくらいだ、という論調で、まとめた論文でした。

 

この論文が発表された、2014年においては、この私の主張は、ビクトーザを販売しているノボノルディスク社も知るところとなり、ました。なぜなら、いっせいに、私の外来から、ビクトーザを処方している患者さんがいなくなったからです。その数、たしか、99名前後だったように記憶しています。

 

ビクトーザは高価な薬剤でしたから、一斉に、ビクトーザから、当時、話題だった、DPP4阻害剤や、次につづく、ビデュリオンへの切り替えは、ノボノルディスク社にとっても、大きな痛手だったのかもしれません。しかし、その頃には、ビクトーザは、SU剤以外の薬剤との併用も可能となり、とくに、メトフォルミンとビクトーザとの併用によって、悪心、嘔吐が継続するケースも増え、しだいに、GLP1タキフィラキシーに対しての、考え方、感じ方は、欧米と似たような考え方になっていったわけです。

 

というのは、欧米では、糖尿病の治療薬の基本薬といえば、メトフォルミン、でしたし、今でも、そうです。そして、メトフォルミン自体が、GLP1濃度を高めるだけでなく、ビクトーザなどの効果を強調させるものだった薬剤だったのです。その2つの薬剤の併用が可能になったことで、ビクトーザ、プラス、メトフォルミン、という処方が可能になり、そうなると、悪心、嘔吐は、以前より、もっと「悪者」に思えてくる処方術になってしまったわけです。

 

こうなってくると、それまで、GLP1タキフィラキシーの定義に、製薬メーカーの意図的な意思があるという指摘が、必ずしも、あたらなくなってきました。やはり、欧米のように、GLP1治療においては、GLP1の生理的濃度は維持しつつも、「悪心、嘔吐」などの副作用が軽減することだけを、もってして、「GLP1タキフィラキシーは、GLP1治療においては、良い現象」という意見に、賛成せざるを得なくなりました。

 

(続く)